札幌家庭裁判所 昭和51年(少ハ)6号 決定
少年 B・M(昭三二・一・一六生)
主文
本件戻し収容申請を棄却する。
理由
一 本件戻し収容申請の理由は昭和五一年一一月五日付北海道地方更生保護委員会作成の別紙「戻し収容申請理由」に記載のとおりであり、その要旨は「少年は中等少年院を仮退院後札幌保護観察所の保護観察中の者であるが、法定及び特別遵守事項を守らず就職の意欲を示さないばかりか、仮退院後まもなく不純異性交遊に走り担当保護司や主任官の再三にわたる助言指導をよそに怠惰乱脈な生活を続け、仮退院当初より更生意欲は乏しく母親の保護能力の欠如と相俟ち、引き続き保護観察による改善更生は期待することができない現状であるので、本人を再度収容矯正教育を施し社会適応性を涵養させることが相当であると認められるので、犯罪者予防更生法四三条一項に基づき少年に対し少年院への戻し収容決定を求める。」というにある。
二 当裁判所の判断
1 本件一件記録及び当審判における本人の供述を総合すれば、少年が仮退院後の保護観察中遵守すべき犯罪者予防更生法三四条二項一号ないし三号所定の遵守事項ならびに特別遵守事項に違反したものであることを認めることができる。
2 そこで進んで戻し収容の当否につき判断する。少年は少年院での矯正教育に極めて強い不適応をおこし、仮退院直後の時点において既に更生の意欲を欠如しており、少年院での矯正教育も少年にとつては効を妻さなかつたことが認められる。更に仮退院後の生活の経過、現在も少年院に対して極めて強い拒否感情を抱いていること、これまでの保護処分によつてなお非行に対する少年の安易な傾向が矯正改善されえなかつたこと等を考慮すれば、保護処分の限界をこえていると認めざるをえず、今さら少年院に戻して収容することは適当でないと思料される。そこで少年の年齢及び非行に対する厳格な認識を持たせ、安易な態度の改善を考慮し、新しい処遇として刑事処分を選ぶのが相当であると認められるから、昭和五一年(少)第二八六四、第二八八七号事件につき当裁判所は昭和五一年一二月二七日検察官送致の決定をしたものである。
以上の次第であるから本件戻し収容の申請はこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 日野忠和)